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「男子厨房に入らず」

どこの国の言葉かわからないが、何という甘美な響きを持っているのだろう。

長く私はそう思っていた。

「男子厨房に入らず」この言葉は、男性を煩わしい家事から解放してくれた。事実私はこの言葉を盾に、いつも食事が出来るまで、ゴロゴロ寝そべっていてた。

少しは手伝ってよ。

wpe3A.jpg (8610 バイト)         wpe3C.jpg (10131 バイト) そう言われたら

こう答えればいい。

「男子厨房に入らず」

しかし、数年前に

その錦の御旗を引き裂く出来事が起こった。

あるシステムキッチンのコマーシャルだ。

そのコマーシャルでは2人の初老の男性がエプロン姿で、厨房に立っている。

驚いたことに二人は料理をしている。

しかも、こともあろうに料理を楽しんでいる。

いつものように寝そべってテレビを見ていた自分は「まずい」内心そう思った。

いつも何もしないでゴロゴロしている自分にとって

このコマーシャルを盾にとって、食事作りに参加を求められたらたまらない。

平静を装いながらも心の中は焦っていた。

何とかしなくては…

チャンネルを変えるのは簡単だがそれはその場しのぎにしか過ぎない。

しばらくこのコマーシャルは続くだろう。

何とか…

しかし、考える間もなくいかずちのような言葉が浴びせかけられた。

「男子厨房に入り浸る」

何!

「だ、男子厨房に…」

その後なんて言ったんだ。

自分の人生観を根底から覆すようなそのフレーズをわたしの大脳は受け付けようとはしなかった。

しかし、自分の身を守ろうとする本能とは裏腹に

男優の言葉が頭の中を渦巻いていた。

「男子厨房に…いりびたる」

「男子厨房に…いりびたる」

「男子厨房に…いりびたる…」

                                                                     

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